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2026年6月3日(火)-6月7日(日)
上映時間15分ループ再生

会場: SCHAUT! Ausstellungsraum im Mal Seh'n Kino 
Adlerflychtstraße 6 | 60318 Frankfurt am Main

スケジュール詳細



内覧会: 2026年6月3日(火), 17:00
会場: SCHAUT! Ausstellungsraum im Mal Seh'n Kino


スケジュール詳細

2011年、私は自宅近くに広がる巨椋池干拓地で撮影した《The Stream》シリーズの制作を開始しました。以来、毎年1本ずつ制作を続け、これまでに14作品を完成させています。

 

私の住まう宇治市にある巨椋池干拓地は、私にとって特別な場所です。同じ宇治市にある『源氏物語』ゆかりの史跡や平等院、そして任天堂ミュージアムとは、まったく異なる存在です。かつて湖であった広大な土地の大部分は、現在では農地となっています。その面積は、野球場が170か所収まるほどの広さです。ここには日光や風を遮る高い建物がありません。また、農作業に携わる少数の人々を除けば、人影はほとんどありません。音についても、遠くを走る車の音と時折聞こえる鳥のさえずりだけが響く、静かな環境です。

そのため、180度の視界に広がる空は、空そのものの色彩と雲の流れによって満たされています。農地に降り注ぐ光もまた、朝から夕方にかけて色彩や温度を変化させ、その移ろいを身体的に体感させます。風も、遮る建物がないため、気象そのままの風向や風速を直接感じ取ることができます。

 

干拓地は人工の土地ですが、同じ人工環境である都市のビル群とは本質的に異なります。ここで撮影・録音されるものには、都市部では得られない希少な情報が満ちています。私は、この希少な情報を含む「流れ」に注目しました。

この干拓地には、三つの流れがあります。

一つ目は、自然の流れです。川、風、雲、雨、太陽の運行、鳥の飛翔、魚の遡上など。

二つ目は、人間の活動による流れです。農耕の工程、灌漑、排水、車両の往来。

三つ目は、干拓地をめぐる歴史の流れです。湖から干拓地へと至る治水の歴史、そこに残された史跡や人々の証言です。

これらは止まることなく、現在も流れ続けています。この3つの流れを再構成し、干拓地がもつ躍動感を表現した作品が《The Stream》です。

次に、なぜビデオというメディアで表現するのかについて説明します。
ビデオは、人間の視聴覚機能を拡張します。接写、空撮、水中撮影、時間の早送りなど、映像の眼を通してしか捉えられない視点は、事物の多様な側面を発見させます。その発見によって、平凡と思われていた日常が驚きに満ちていることを知ることができます。私は、ビデオによる発見を通して、対象に対する既成概念を捉え直し、自分独自の表現を試みています。

​​

今回の上映展では2019年制作「The Stream X(10) 」(6分)と2025年制作「The Stream XIV(14)」(9分)がループ再生されます。鑑賞時間は約15分です。

上映作品解説

the_stream_X_b.jpg

予告編  (1分)

「The Stream X」 2019年、6分

 

The Stream シリーズでは宇治市の巨椋池(おぐらいけ)地区にある農耕地の水路を撮影の対象にしています。水流によって揺れ動く藻、電動ポンプによる注水で発生する気泡の渦。この作品の水流は手つかずの自然から生じるのではなく、人間の生活のため、機械によって人工的に生み出された水流なのです。

第10作では、水中の環境音を水路の外の環境音に置き換えるという実験を試みました。その結果、観客は風の音をあたかも水中の環境音であるかのように体験することになります。風は水草を揺らし、水面に浮かぶ物体を押し流していきます。私は、この風の表現を「流れ」のメタファーとして用いることで、本作のテーマである水の躍動感を観客に印象づけることを意図しました。

「The Stream X 」の主な受賞:2020年

 

第4回 The Artists Forum Festival of the Moving Image/ニューヨーク

以下4部門の受賞

​​

最優秀短編実験映画賞

最優秀サウンドデザイン賞

最優秀撮影賞

審査委員賞

第7回Fine Arts Film Festival, ロサンゼルス/最優秀実験映画賞

第18回 Festival International Signes de Nuit,パリ/ナイト賞 

 

「The Stream X 」の主な上映:2020年
・第24回ロードアイランド映画祭/アメリカ

・第15回札幌短編国際映画祭
・他、24ヶ
所の映画祭で上映。

 

The_Streram_XIV_02.jpg

​予告編(1分)

「The Stream XIV」2025年、9分

 

「The Stream」シリーズ第14作では、「流れ」を液体に限定せず、風、炎、煙、雲といった気体へと拡張しました。炎などによる気温の変化によって地上から水蒸気が発生し、雲が生成されます。そして雲は降雨をもたらし、水は再び地上で川や海となって循環していきます。

この一連の循環によって生み出される風景は、気象や栽培の過程によって絶えず変化し、流動しています。本作では、気象現象としての「風」に着目し、風にたなびく稲穂を風鈴の音と結びつけることで、風景が変容していく躍動感を表現しました。

また、本作には葦原を焼く場面が登場します。葦原を焼く際には温室効果ガスである二酸化炭素が発生しますが、春に葦が発芽し成長する過程で、その二酸化炭素は吸収されます。そのため、温室効果ガスの排出量は全体として実質的にゼロとなります。

 

「The Stream XIV」の主な上映:2025年
・第13
Swedenborg Film Festival/ロンドン
・第23回
Festival international Signes de Nuit/パリ
・第12回日本セルビア映画祭/大阪、ベオグラード

第10回THE ARTISTS FORUM FESTIVAL OF THE MOVING IMAGE, New York, USA
・他、14カ所の映画祭で上映。

​撮影手法について

水路風景2020.jpg

撮影地は京都府宇治市にある巨椋池(おぐらいけ)干拓田と呼ばれる田園地帯です。

1933年までは巨椋池と呼ばれる京都府の最大の面積をもつ淡水湖がありました。

 

この干拓田の一部では地下水によって灌漑が行われており、私はこの透明度が高い地下水を利用した水路のみで水中撮影をしています。​

撮影スライダー.jpg
fig06.jpg

撮影のビデオカメラは「GoPro」を使用しています。加えてカメラに装着できる接写レンズと水路内の移動撮影の機材としてスライダーを使用しています。


水路の中の藻は水田に最初に水を入れる6月ごろに発生します。藻はコンクリート製水路の内側に糸を束ねたように密生します。またその範囲も約100メートルに及びます。水路の両縁にスライダーを固定し、スライダーから吊り下げたカメラで移動撮影します。地下水を汲み上げた水路の場合は透明度が高く、約30メートル前後の範囲を鮮明に撮影できます。


水路は幅50cm,深さ50cmのサイズです。Goproという小型カメラだからこそ狭い水中で自由に移動し撮影できます。

fig12.tif
マイク.jpg

音響については、環境音を加工して使用することで、実際には無い水流の効果音を創作しています。マイクは水中用のマイクを使用。水田内に水を引き込むパイプ内にマイクを入れ録音する事もあります。

 

貝殻を耳にあてると聞こえてくる潮騒のような共鳴音を聴いたことはあるでしょうか。水田のパイプ内も同様に同じ共鳴音が生じます。パイプの外の環境音が共鳴し特定の高さの音が重なりコーラスのような和音になる場合があります。


パイプ以外の方法としてガラス製のコップや瓶を撮影現場に配置し水田の環境音が共鳴する音響も録音します。私はこれらの音響を録音し、作品の効果音として使用しています。

The Stream シリーズ関連サイト

TheStreamXII_06.jpg

1) ストリームシリーズ 櫻井宏哉

The Streamシリーズの全ての解説とダイジェスト版を視聴できます。ただし言語は英語のみです。

 

https://sakurai543.wixsite.com/mysite

2) フェイスブック

The Streamシリーズが上映される内外の映画祭の紹介を投稿しています。

言語は英語のみです。

 

https://www.facebook.com/profile.php?id=100009720904181

3)Instagram

The Streamシリーズの撮影現場の写真を投稿しています。

 

https://www.instagram.com/hiroya__sakurai/

 

4) 成安造形大学紀要

The Streamシリーズの12作品の制作報告をWEB上で閲覧できます。本サイトの最後にリストを掲載しましたので参照ください。閲覧リストはこちらをクリックください。

​櫻井宏哉・略歴

アーゾロ芸術映画祭の受賞トロフィーと本人(2023年)

1958年 横浜市生まれ。京都府宇治市在住
成安造形大学 名誉教授​、日本映像学会会員


武蔵野美術大学 芸能デザイン学科(現・空間演出デザイン学科)卒業
筑波大学大学院 総合造形コース修了


主な個展

「櫻井宏哉展」ビデオギャラリースキャン、東京、1985
「THE STREAM, Hiroya Sakurai」ラトローブ・リージョナル・ギャラリー、オーストラリア、2019

 

主な受賞

「アーゾロ芸術映画祭」イタリア、2023

「アナーバー映画祭」アメリカ、2018

​「東京ビデオフェスティバル」東京、2017​
 

主な上映

「シドニー・ビエンナーレ」オーストラリア、1982

「日本の戦後芸術」アメリカ、2017

「文化庁メディア芸術祭」東京、2018
 

作品収蔵:

ゲティ財団、アメリカ

カナダ国立美術館

​詳細な履歴​​

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